看護学科 Nursing

地域看護学

平成26年4月に防衛医科大学校医学教育部看護学科地域看護学講座が開設された。おもに自衛官候補学生ならびに技官候補学生の保健師・看護師免許の取得に関わる教育を行っている。
地域看護学講座は、地域で生活している様々な健康レベルの人々やコミュニティ全体の健康の保持・増進を推進し、疾病を予防することができる看護職の教育を目指している。また、疾病や障害などの様々な健康課題を抱えながらも、住み慣れた家や地域で在宅療養者とその家族が自分らしく生活できるよう、またQOLの向上を支援するための看護を探求している。
令和5年4月現在、早野貴美子教授、瀬在泉准教授、野口宣人講師、内田香里講師、中村眞弓助教、室円助教、坪井美恵子助教、岩間裕司助教の教官8名の構成で、教育及び研究にあたっている。

授業風景

授業風景

本講座は保健師教育を目的とした公衆衛生看護学と看護の統合分野である在宅看護学の2つの学問領域を併せ持った講座である。
公衆衛生看護学は、個別から地域全体を含む地域生活集団を対象とした看護活動であり、疾病・障害の予防、健康の保持・増進に焦点をあてる。公衆衛生看護を担う保健師は個人、家族、集団のそれぞれに個別にかかわるとともに、健康課題の解決に関わる各種プログラムづくりや体制づくりなど、健康によい影響を及ぼす仕組みづくりや新しい施策の創出にかかわる。よって公衆衛生看護学では成人、小児、母性などの各領域分野で体系的に学習した看護学を基盤に、さらに公衆衛生の予防的視点および対象を広くとらえる俯瞰的な視点、創造性を重視した学習を行う。科目としては「地域ケアシステム入門」(1年次)、「保健医療福祉行政論1」(2年次)、「公衆衛生看護学概論」をはじめ「公衆衛生看護学各論Ⅰ~Ⅲ」「疫学」「保健統計学」(2年次後期から4年次)、保健所や市町村などで行う「公衆衛生看護学実習」(4年次)を通して保健師に必要な知識と技術を身につけていく。
在宅看護学の目的は、自宅および自宅に準じた環境で、新生児から高齢者までを対象に、保健・医療・福祉など、あらゆる社会資源の活用や他機関、多職種と連携し、自分らしく生活できるよう療養する人およびその人を介護する家族を支えるための看護の実践である。高齢者であっても、慢性期疾患に罹患しても、精神および知的、身体障害者(児)であっても、また、様々な疾病の後遺症、がん末期であっても、可能な限り住み慣れた生活の場において必要な医療・介護サービスが受けられ、安心・安全・安楽な生活を実現できるようにするための看護を学ぶことである。在宅看護は、訪問看護を中心に展開する。訪問看護は、在宅や施設で暮らす中度・重度の要介護者やターミナル期、医療依存度の高い療養者のQOLの向上をめざすために重要な役割を担っている。「地域・在宅看護学概論」「地域・在宅看護援助論Ⅰ」(2年次)、「地域・在宅看護援助論Ⅱ」(3年次)、「在宅看護学実習(訪問看護ステーションでの実習)」「保健医療チーム連携論」(4年次)を通して、看護の統合分野として質の高い看護師教育を実施していく。

早野教授は、陸上自衛隊看護官としての災害派遣活動経験を踏まえ、災害時の看護活動におけるリーダーシップ、チームワークの機能に着目し、制約された状況における看護活動の組織化に関する研究を行ってきた。現在は「災害時の健康危機を支えるヘルス・リスクコミュニケーションのアルゴリズム開発」に取り組んでいる。
瀬在准教授は、人々の日頃の生活習慣が健康に与える影響に着目し、行動変容を支える保健指導や健康相談技術、特にタバコ・スマホなど依存の問題を抱える方への個人やグループ支援、更には看護職の禁煙支援技術の向上を目指した研究を行っている。
野口講師は、産業精神保健や災害・国際看護の領域を専門としている。現在は「特殊な環境下で活動する人々のストレス反応とストレス関連障害の予防」というテーマで、関係機関と協働して研究を進めている。そして、これまでの研究成果を対象となる人や組織と共有し、活用できるよう支援することを目標としている。
内田講師は、入院患者が退院後も望む生活を送り、その人らしく生きることを支えられるよう、退院に向けた支援に関する研究を行っている。高齢化や在院日数の短縮化が進む中、今後、病気を抱えながら地域の中で暮らす人々が増えていくと考えられ、そのような人々の生活の質の向上に寄与することを目標としている。
中村助教は、労働者のポジティブな心理的側面に焦点をあてた「ワーク・エンゲイジメント」という概念に着目し、「ワーク・エンゲイジメント向上を図るプログラム開発」の研究に取り組んでいる。さまざまな職種の労働者が健康でかつイキイキと働ける職場環境づくりに寄与することを目標としている。
室助教は、自衛官を対象に壮年期労働者の生活習慣病予防に関する研究を行っている。労働者が疾病を持ちながらも活き活きと働き、自分らしく生活するための支援に寄与することを目標としている。
坪井助教は、訪問看護の経験から地域でのアウトリーチ支援、AYA世代(思春期と若年成人)のがん患者のケアについて研究を進めている。疾患を抱えながらもその人らしさを大切に、住み慣れた地域で生活することができるよう支援に寄与することを目標としている。
岩間助教は、看護職者が経験から自律的に学びを深めていくための暗黙的な思考スキルの教育に関する研究を行っている。これまでには、看護師の不安が学びを損ねる点に着目し、不安を自己調整する思考スキルの教育プログラムを開発した。教育を通じて看護の価値を創造し、豊かで健康な社会作りに貢献することを目指している。

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