医学科 Medicine

小児科学

「PTEN遺伝子変異による原発性免疫不全症の発見」

防衛医科大学校小児科学講座の辻田由喜研究科学生、関中(三井)佳奈子(同)、野々山恵章教授らは、PTEN遺伝子変異により原発性免疫不全症であるAPDS–L症候群が発症することを発見しました。これまで、PTEN遺伝子変異は巨頭症や多発性の過誤腫を起こし、甲状腺、子宮、乳腺等の良性・悪性の腫瘍発生リスクを高くすることが知られていましたが、原発性免疫不全症を起こすことは知られていませんでした。APDS–L症候群の原因遺伝子を同定したことは、本疾患の病態解明、適切な治療法の開発に大きく貢献します。本研究は、東京医科歯科大学、広島大学、かずさDNA研究所など国内11カ所の研究施設との多施設共同研究によるものです。
本研究成果は2016年7月14日に米国の医学専門雑誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されます。

論文タイトル
Phosphatase and tensin homolog (PTEN) mutation can cause activated phosphatidylinositol 3–kinase δ syndrome–like immunodeficiency

防衛医科大学校設立以来、岩波文門部長、吉岡重威部長、関根勇夫部長に続き、平成14年10月に野々山恵章部長が第4代部長に就任し、現在に至っている。防衛医科大学校病院設立以来のスタッフは既に在籍していないが、近隣医療機関には多くの元スタッフや退職した卒業生が在籍し、大学校病院と相互に連絡をとりながら小児医療に従事している。また、小児科は各地の自衛隊病院の小児科部長のみならず、看護学院長や教育部長を勤める等、指導的立場で自衛隊医療に貢献している卒業生を輩出している。

学生に対する小児科学の系統講義と特別講義は、各分野の担当スタッフが実施している。クリニカル・クラークシップの学生実習は外来実習を主にスタッフが、病棟実習を主に専門研修医とスタッフが、各々担当している。また、小児科は早くから病院外のクリニック実習を取り入れ、主に所沢市内の医療機関の協力を得て、大学病院では経験できない地域の小児医療を実地体験させている。
初任実務研修医の教育については、ローテーション研修医は1ヶ月間という短い期間ではあるが、専門研修医とスタッフの指導の下で主に病棟勤務を行っている。小児科では研修医当直制度を維持しており、病院の小児科当直医と共に夜間や休日の診療を実施することで小児初期救急医療の理解を深めるようにしている。将来小児科医を志望している初任実務研修医については、3~6ヶ月間の初任実務研修期間中に小児科学の各分野を網羅した研修ができるよう、夫々特性のある3グループのすべてに所属するよう研修を工夫している。
専門研修医については、野々山部長の強い要望により、小児科の特定の分野に偏らない臨床能力を身に着ける意味で、研修期間を通して小児科のすべてのグループで研修を行うことを義務づけている。同時に、各自が専攻したい分野については、防衛医科大学校病院のみでの研修ではなく、小児病院や特定の分野で先進的な医療を行っている教育医療機関で一定期間部外研修を行うことで、各専門研修医の技量を向上させるのと同時に、習得してきた技術を科にフィードバックしてもらっている。
研究科学生については、各研究科学生は各自の希望に沿って研究テーマを決め、小児科学研究室や研究に必要な設備のある講座や医育機関で研究を行っている。研究の進捗状況は定期的に実施されている検討会で吟味され、これまでの結果やこれからの方向性、また発表内容等について十分な指導を受けている。なお、野々山部長の意向で、研究者であっても臨床能力を維持するべきであるとして、研究科学生も週1回の外来診療と病院当直勤務を行っている。
防衛医科大学校高等看護学院では、1年次に2回、2年次には10回、各分野を専門とするスタッフが講義を実施している。

防衛医科大学校小児科学講座の主たる研究テーマは部長とともに変わり、内分泌・代謝を専門とした吉岡部長の時には1.5–anhydroglucitolの糖尿病コントロールにおける有用性を証明した。関根部長の時には川崎病治療におけるウリナスタチンの有効性を初めて示し、以後も研究が継続している。
野々山部長が就任してからの免疫不全症に関する一貫した研究は、TRECsとKRECsの臨床応用を確立し有用性を本邦で初めて示し、GATA–2欠損症等の疾患を本邦で発見する等、目覚しいものがある。研究設備に関しては細胞解析装置、核酸増幅装置、次世代遺伝子解析装置などを教室に整備し、多種多様な実験を教室独自で実施可能としている。また、野々山部長が主幹となって先天性免疫不全症患者に関する日本免疫不全症研究会と、中央診断登録システムPIDJを創設したことにより、日本国内のみならず海外からも免疫不全症関連の検体が検査依頼されてくるようになっている。免疫不全症の研究に関しては国内外の研究機関と密接に連絡・協力を行っており、今後も発展が期待されている。
この他、循環器疾患、神経疾患や腎疾患に関して他の医育機関や研究期間と連携で、小児科学講座のみでは実施できない研究を行っている。

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