国際感染症学
沿革
本講座は昭和52 年4 月に寄生虫学講座として開設された。初代教授として、濱島房則が九州大学医学部より着任した。その後第2代教授として多田隈卓史が慶應義塾大学医学部より平成6 年10 月に着任、第3代教授として宮平靖が順天堂大学医学部から平成18年4月に着任した。寄生虫学講座は平成18年3月に廃止され、4月より国際感染症学講座が開設された。令和7年1月に本校卒業生(23 期)の三木田馨が第4代教授として着任した。
令和8年4月現在の教室構成員は、三木田、小野岳史学内講師、教務職員の山口陽子、事務補助員の鎌田愛沙、研究補助員の森悠の計5 名である。また、複数の学部生が本講座で研究を実施し、学会発表にも積極的に取り組んでいる。
教育の概要
三木田は、感染症系、感染症系(実習)および感染症系(臨床)の責任者として、第2学年の感染症系講義、第3 学年の感染症系実習、第4 学年の感染症系(臨床)の講義を、他講座の教官と協力しながら実施している。また、看護科学生に対しては、第1 学年を対象に生体防御学の講義を担当している。
感染症系の講義・実習では、細菌学、ウイルス学、真菌学、寄生虫学、医動物学を含む感染症学の基礎から臨床応用までを体系的に扱っている。国内で重要な病原体のみならず、海外で問題となる感染症についても重点的に取り上げ、病原体、宿主、生体防御、疫学、診断、治療、予防の各観点から感染症を総合的に理解できるよう教育を行っている。また、講義では座学に加え、学生によるプレゼンテーションの機会を設けるなど、主体的な学修を促す工夫を行っている。
研究の要約
本講座では、感染症学および熱帯医学を基盤として、簡易迅速診断法の開発、宿主指向型感染制御法の開発、環境試料を用いた病原体・薬剤耐性サーベイランスを主要な研究テーマとしている。基礎研究で得られた知見を、臨床診断、公衆衛生、感染症対策、低資源地域や災害・派遣医療の現場で活用可能な技術へと展開することを目指している。
簡易迅速感染症診断法の開発では、等温遺伝子増幅法であるLAMP 法を応用し、特別な機器や高度な検査設備を必要としない感染症診断法の構築を進めている。特に、医療資源に乏しい地域・国、災害医療、派遣医療などの現場においても実施可能な診断技術の開発を目指している。病原体の検出に加え、薬剤耐性や病原性に関わる遺伝子の検出にも応用可能な技術基盤の確立を進めている。これまでに、マラリア、皮膚リーシュマニア症、トキソプラズマ症といった熱帯医学・寄生虫学分野の病原体、さらにカルバペネム系抗菌薬耐性菌といった薬剤耐性菌についても研究成果を論文として報告している。
宿主指向型感染制御法の開発に向けた研究では、感染症の病態を宿主応答の観点から理解し、感染防御に有利な免疫制御法の確立を目指している。特に、免疫・微生物学講座との共同研究として、過剰な炎症の抑制と自然免疫細胞を介した病原体排除を両立するLPSプレコンディショニングに着目し、その感染防御効果と作用機序の解析を進めている。これまでに、マラリア原虫感染モデルを用いて、LPS プレコンディショニングが感染病態の改善に寄与することを示してきた。現在は、LPS プレコンディショニングによる宿主免疫応答を、マクロファージ機能、炎症制御、病原体排除の観点から解析し、作用機序の解明を進めている。さらに、マラリア原虫に限らず、さまざまな病原体に対する応用可能性を探索している。これらの研究を通じて、LPS プレコンディショニングを基盤とした宿主応答制御による新たな感染症制御法の確立を目指している。
これらの研究は、防衛医科大学校内の各部門に加え、帝京大学、産業技術総合研究所、自治医科大学、国際医療福祉大学、産業医科大学、東京大学、国立エクアドル中央大学を含む国内外の多様な研究機関との共同研究として進めている。異なる専門性を有する研究者・機関と連携することで、病原体検出技術、感染症病態解析、環境サーベイランス、公衆衛生応用を有機的に結びつけ、実際の医療・公衆衛生上の課題解決に資する感染症研究の展開を目指している。






