医学科 Medicine

物理学

沿革

昭和49年5月、防衛大学校の溝口裕教授と久野九万雄助教授が兼務で着任した。昭和50年溝口教授は本校専任となり、久野助教授は兼務を解かれ、昭和51年に羽島正紘が助手として防衛大学校より着任した。昭和54年に、研究室は進学課程校舎に移転した。昭和57年に溝口教授は定年退官し、橋本淑夫教授が東京大学から着任した。平成7年に橋本教授は定年退官し、牧嶋章泰が動物実験施設(RI)から助教授として着任した。平成18年講師の定年退官とともにポストは割愛され、非常勤講師となった。平成19年10月、牧嶋が教授に昇任した。

教育の概要

29期生までは、第1学年の1年間物理学Ⅰの講義、第2学年の前期物理学Ⅱの講義、第1学年後期から第2学年前期までの1年間物理学実験を行ってきた。物理学Ⅰは、一般教育科目として、力学、流体力学、熱学、電磁気学、波動・光学等の古典物理学を、物理的な考え方や物の捉え方を学生に把握させながら理解させるように配慮して授業を行った。物理学Ⅱは、基礎教育科目として専門課程教育とのつながりを考慮し、相対論、量子論、物性論、原子物理、放射線物理等の現代物理学等の講義を行っていた。物理学実験は、実験科学である物理学の基礎的な事実を学生が体験することによって理解を深めると共に、医学の実習に必要な実験・実習に対する考え方・接し方・機器の取り扱い方等を体得するよう指導していた。
30期生からは、講義は旧Ⅰ・Ⅱを併せて物理学Ⅰとなり第1学年の1年間、実験は物理学Ⅱと名称を変え第1学年前期の半年間となった。平成19年の34期生からは時間数はさらに短縮され、講義と実験を併せて物理学となった。短縮された時間の一部で統合ゼミが新設され、個人線量計、サーベイメータ、γ線スペクトロメータ等の放射線測定器を用いた実測を行っている。平成25年の40期生から改訂が行われ、物理学の時間数が僅かに増加した。

研究の要約

研究課題の1つは流体物理で、壁面乱流、海浜循環流、血管系の力学的解析等を行ったが、平成18年講師の定年退官により終了した。
もう1つは原子核物理・放射線物理で、日本原子力研究所・東京工業大学と協力研究で行った。平成6年度から使用可能となった原研タンデム加速器の後段超伝導リニアック加速器も使用して、深部非弾性散乱反応により68Ni領域の中性子過剰核の核構造を研究した。この反応により得られる生成核種を判別できるΔE–E型Si検出器とγ線用Ge検出器から成る“isomer–scope”を開発した。測定した核は、陽子・中性子どちらも閉殻である二重魔法数核領域であるので、殻模型と比較・検討を行った。平成16年度からはisomer scopeを用いインビームγ線分光法でアクチナイド核種の測定し、この方法では世界で一番重い核種を更新した。これは、日本原子力研究開発機構(旧・原研)に、核物理と核化学の研究者が生き残っていること、機構では核原料物質・核燃料物質を研究に使用できることによる。これらの条件がそろうのは日本では機構だけである。アクチナイドで箔にできる最も原子番号が大きい元素はCfであり、252Cfはインビームγ線分光法で測定できた最も重い核種である。この結果は、平成22年に米国物理学会のPhysical Review誌に掲載された。平成23年の東日本大震災により、建屋周りの地盤が10cm以上沈下し、玄関脇には深さ2mの空洞が生じ、内部も大きくズレてしまった。加速器は年内に復旧したが、実験準備室が復旧したのは平成25年3月末であった。平成25年度から実験が復活でき、核分裂アイソマーの研究を始めたばかりである。

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