衛生学公衆衛生学
沿革
衛生学公衆衛生学講座は本校の講座再編によって平成18年4月より旧衛生学および旧公衆衛生学講座が併合されたことによる新講座である。各々の経緯は、まず旧衛生学講座の初代教授に昭和49年に横堀栄教授が着任した。次いで、昭和57年に第2代教授に万木良平教授が昇任した。その後、平成2年に第3代教授として、大野秀樹教授が着任した。平成12年に第4代教授として櫻井裕教授が着任した。一方、旧公衆衛生学講座においては、初代教授として、昭和49年に阿部克己教授が着任した。次いで、昭和61年に中村健一教授が第2代教授として着任した。その後、平成2年に古野純典教授が第3代教授として着任した。平成8年に吉澤信行教授が第4代教授として着任した。吉澤教授の定年退官を機に両講座が併合され、平成18年4月に旧衛生学の櫻井教授が衛生学公衆衛生学講座の初代教授として着任後、教育担当副校長(併)医学教育部長に就任したため、規定により教授職を離れた。平成29年4月に第2代教授として角田正史教授が着任した。現在の本講座の構成人員は教授を含め5名の教官および事務職員1名という衛生学公衆衛生学分野としてはコンパクトな構成であるが、全員が一丸となって講座の運営、教育および研究に奔走している。
本講座は、他大学の教授・准教授の輩出が多いことも特徴である。獨協医大の春木教授、名城大学の梅田教授、了徳寺大学の眞鍋教授、熊本大学の大益准教授、杏林大学の片桐准教授も本講座の出身である。
教育の概要
衛生学公衆衛生学講座では第3学年に対し、衛生学の講義および実習、第4学年に対し、公衆衛生学の講義および実習、並びに第6学年における衛生学公衆衛生学の講義を担当している。
衛生学および公衆衛生学の教育目標は集団の疾病予防と健康の維持・増進であり、その実践には、グローバルな健康事象の把握、科学的な疾病予防、健康増進の具体的方策の確立および行政施策の評価など多面的な活動が必要である。代々の教授の専門分野および社会情勢の変化に対応して教育の主眼点はその都度変遷してきたが、教育に対する基本姿勢は現在も引き継がれ、発展を続けている。
第3学年の衛生学の講義では、予防医学概論、疫学、様々な分野における環境保健、産業保健総論、産業医学、国際保健、医療安全管理・危機管理、医療過誤など、広範な領域にわたって教育をおこなっている。また衛生学実習ではその一部の時間内で、学生に対し、近郊の水処理センター等を見学させ、環境保健学の必要性を体感させている。また、食品製造工場の見学も行い、食品衛生及び産業医学の重要性を認識させている。この経験が卒後の衛生活動に微力でも寄与できることを願っている。
第4学年の公衆衛生学の講義では衛生学の知識を体得した学生に対し、予防医学全体像を把握させ、社会医学の意味を探求させることを目的としている。その教育内容は社会医学・保健統計、保健医療福祉関連法規と制度、地域保健・地域医療、予防医学、医療安全管理等、多岐にわたって指導している。公衆衛生学実習では実際の産業保健・環境保健・地域保健・国際保健・高齢者保健・食品保健の実地を体験させ、自らの経験により知識を体得させ、かつ他者にその知識を広めることができる能力の養成を目的としている。本実習ではこの目的を展開させるため、学生は少人数グループで産業保健・環境保健・地域保健・国際保健・高齢者保健・食品保健の各施設を、自己学習による基礎知識を持った上で訪問し、実習により現場を体験する、そして各自が論文形式の報告書を作成すると共に実習の仕上げとして、学会形式の発表と討論を進行し、知識を学生間で共有する。実地の経験で知識を確実にすることは、学生の社会医学系の学習のモチベーションの増大に繋がるものである。
第6学年の講義においては、新たに提起された衛生学と公衆衛生学上の問題点を理解させると共に衛生学と公衆衛生学を総括的に復習させ、その知識を確固たるものにさせることである。
研究の要約
研究に関しては、1)自衛隊部隊、特に海上自衛隊の協力を得て、自衛隊員の検診結果の集計を大きな課題としている。防衛医大の任務として将来の医官育成があるが、卒業生と連携してビッグデータの解析を行い、隊員や医官に有益な結果を返している。2)産業医学の分野の研究では、産業の現場をフィールドとして肥満・糖尿病の疫学研究に取り組んでいる。終身雇用制をとっている我が国の産業の現場はコホート研究の上で重要なフィールドで、ここから得られる貴重な情報を収集し研究に生かしている。従来の個人を追う疫学研究に加え、事業所という単位で疾病発生を見る手法を試みている。3)さらに従来の疫学研究に加え、他講座と協力して、ゲノム疫学、運動疫学など新しい分野にも挑戦し、競争的資金の獲得や研究発表を行っている。4)健康保持・増進、特に口腔内の健康保持に着眼した研究も行っている。DDSの手法を用いて所謂虫歯や歯周病の被患の阻止を目指した実験を進めている。これについては、簡単そうでありながら、今日でも阻止の決定打は未だ無いのが現状である。この研究の成果は私達の健康保持増進の一部として寄与できるものと考える。5)毒性学に関しては細胞培養を中心に、ヒトへの曝露があり得、健康影響が懸念される物質について研究を行っている。6)未だ定義が定まっていないシックハウス症候群、化学物質過敏症について、その本態に近づくための研究を疫学手法を用いて行っている。7)環境要因の健康リスクのコントロールを目指す疫学およびリスク評価研究を行っている。