防衛医科大学校白菊会
献体とは
献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することをいいます。
生前から献体したい大学またはこれに関連した団体に登録しておき、亡くなられた時に、遺族あるいは関係者がその遺志にしたがってご遺体を大学に提供することによって、はじめて献体が実行されることになります。
解剖学実習の意義
防衛医科大学校では、医学科第2学年の学生が解剖学実習を履修します。学生たちは献体されたご遺体に接することで、生と死の意義を考え、これから医師という人の生死に関わる仕事に就くのだということを自覚し、勉学に取り組む姿勢を新たにします。学生はまず講義において教科書や図譜(解剖図を集めたもの)などを参照しながら人体の構造を勉強します。実習においてそれをご遺体で確認し、平面の図では分からないからだの奥行きや臓器の重さ、質感なども含めて、実物の人体がどのようになっているかを具体的に理解することができます。また、人体構造の基本は教科書に書かれている通りですが、細部は一人一人異なっています。そうした個人差を実物のご遺体で確認することにより、将来医療の現場で患者さん一人一人に最適な医療を行うためにはどういう点に気を付けなければならないかを実感します。このように、倫理面でも医学知識の面でもご遺体を用いた解剖学実習は、学生にとってかけがえのない体験となるのです。
また、本校の看護学科、自衛隊衛生学校、国立看護大学校、国立障害者リハビリテーションセンター等、医師以外の医療スタッフを養成する学校の学生も解剖されたご遺体を見学します。医学科学生と異なり限られた時間のみですが、これまでに講義や書籍で学んだ解剖学の知識をご遺体で確認してより深い理解に至ることができ、将来医療の現場で働く上で貴重な学習の機会となります。
さらに、すでに医師として働く医官や教官も解剖学実習を行います。学生とは異なり、それぞれの専門分野をより深く探究し、その成果が日々の診療に活かされるとともに、新しい解剖学的知見を見出して学会や論文等で発表することにより、防衛省・自衛隊以外の医療にも貢献することが可能となります。
このように、献体されたご遺体を用いた解剖学実習は、学生の精神的な成長を促すとともに学生や医師・医官の解剖学的知識を深め、医療技術を向上させる大きな役割を担っています。
白菊会の歴史
防衛医科大学校では創立以来、防衛医科大学校白菊会を組織して献体を希望する方に会員登録をしていただいています。白菊会は、東京大学に自らの遺体を提供する申し出をして逝去された倉屋利助氏の貴い行為を社会に広げていくために、ご子息の倉屋利一氏を始めとした方たちによって設立されました。当初は東京大学に遺体を寄贈する会でしたが、同様の会が全国の医学部、歯学部に設立されて、献体登録を受け付けています。本校でははじめ白菊会防衛医科大学校支部としてスタートし、平成16年に白菊会本部の白菊会連合会への改組に伴い、そこに所属する防衛医科大学校白菊会と名称が変わりました。現在、本校の解剖学実習はすべて白菊会会員からの献体を用いて実施されています。
ご遺体を用いた学術研究
解剖学実習用遺体は学生や卒後の医師が解剖学的知識を確認するためにも重要ですが、未だ分かっていない新しい知見を発見するためにも貴重です。ご遺体を用いた学術研究には以下のようなものがあります。
- 解剖学実習中に偶然見つかった稀な構造や配置を記載し発表するもの。
- ある器官や組織の正常構造に着目して、その詳細を系統的に分析して成果を発表するもので、解剖の手法は通常の実習と概ね同様なもの。
- 手術手技の研鑽や手術器材の検討のために、通常の解剖学実習とは大きく異なる手法でご遺体を解剖し、またその成果を発表するもの。
本校では現在1と2のみ実施しています。その際、法令や学会のガイドラインに従って以下のように進めています。
1.の場合は通常の解剖学実習のための同意書(ご本人から生前にいただいた献体登録への同意と、ご遺体の受け入れ時にご遺族からいただく同意)で認められた範囲内と考え、改めて研究への同意をお願いしていません。
2.の場合は通常の解剖学実習に準じた手法ですが、研究のために系統的にご遺体を使用させていただくため、本校ウェブサイトや会報誌において研究内容を公表します。会員さんやご遺族の代表者の方がそれを見て、自分や献体した自分の親族をこの研究には使ってほしくないと思われる場合、本校の献体事務室までご一報いただければ、その方は通常の解剖学実習に使わせていただくのみで研究の対象とはいたしません。
3.は本校の場合、過去に整形外科学領域の治療法の研究が実施されました。また、昨年度から外傷外科の手術手技研修が実施されるようになりました。これらの研修・研究のためにご遺体を使用する場合は、その方のご遺族の代表者の方に事前に研修内容や研究内容をご説明して、同意いただいた場合のみ実施します。
現在実施しているご遺体を用いた学術研究
現在該当する学術研究はありません。