医学科Medicine

臨床検査医学

沿革

臨床検査医学講座は、1977年に米国ベイラー医科大学から着任された鈴木実教授が開講された基礎医学講座としての病理学第一講座に始まる。1994年4月に慶應義塾大学から鳥潟親雄第二代教授が着任、1998年4月に第三代教授として河合俊明助教授が教授に昇任した。2006年6月、本講座は臨床医学講座の「臨床検査医学講座」に変更となり、河合教授はその初代教授となったが、講座運営・教育は実質、病理学第一講座のままだった。病理学第一講座に入職(UC転官)した後、2010年に防衛医大病院検査部副部長に異動していた中西邦昭准教授が、2014年4月に第二代臨床検査医学講座教授(病理学第一講座としては4代目)に昇任した。この時、中西教授は、防衛医大病院検査部長も兼ね、病理学第一講座の講義だけでなく、検査部が行っていた臨床検査の教育・実習、病院検査部運営も担任することになった。このたび中西教授の定年退官に伴い、平成最後で令和元年となる2019年4月1日に松熊晋自衛隊中央病院保健管理センター長が第三代教授(病理学第一としては5代目)・防衛医大病院検査部長として、公募によって選考された。
 一方、この臨床検査医学講座が担任する「臨床検査医学および形態病理学を癒合させた「臨床病理学」が専門研修科目として登場したのは、防衛医大病院検査部の第二代部長・関口進教授の時(1990年)である。その研修目標としての「臨床病理医」の認定には、各学会が主催する病理専門医(当時は認定医)と臨床検査専門医(当初は認定臨床検査医)の両方を取得することとされたが、膨大な領域にまたがり、他大学ではその育成は進んでいなかった。しかし、自己完結型で災害派遣や国際貢献等に携わる自衛隊では、臨床病理医は重要な役割を果たすことが期待され、防衛医大にその育成のための専門研修が始まり、当時、卒後6年目の松熊1等陸尉がその1期生となった。のちには、細胞診専門医も必要と思われ、病理専門医、臨床検査専門医、細胞診専門医の「三種の神器」的な資格取得が臨床病理医の目標となった。1997年4月に玉井誠一副部長(助教授)が第三代検査部長(教授)に昇任して臨床病理医の育成を推進し、防衛医大7期秦美暢、松熊晋、11期島﨑英幸、13期佐藤仁哉、堂本英治、15期緒方衝、加藤圭、16期小原一葉、26期桂田由佳、27期宮居弘輔が臨床検査医資格を取得した。現在、防衛医大には、本講座の松熊教授、緒方准教授(UC転官)、宮居助教(UC転官)、病態病理講座の佐藤准教授(UC転官)、病院検査部の島崎講師(UC転官)が在籍している。今回、最初に臨床病理の専門研修を行った松熊が二代目臨床検査医学講座教授・5代目検査部長として着任し、関口教授・玉井教授が育成した「臨床病理医」による臨床病理学の教育・運営体制がようやく形になってきたといえるかもしれない。
 現在、臨床検査医学講座内には、防衛医大卒業生のみならず、筑波大学卒の土屋基裕助教が在籍し、日々、病理形態学の研修に励んでいる。
 当初二人体制だった教務職員は、現在、冨永晋臨床検査技師ひとりとなり、献身的に剖検業務および標本作成業務等に携わり、講座運営を支えている。

教育の概要

病理学の講義・実習は、当初から病理学第一講座、病理学第二講座と合同で行われてきており、それは、臨床検査医学講座、病態病理学講座と名称変更になった現在でも同じである。2008年度から各系別の統合カリキュラムが施行されるようになり、医学科第2学年から第4学年までにわたって、病理総論および臓器ごとの病理各論の講義を行っているが、さらに前倒しの講義設定が検討されつつある。近年、学生5~6人ごとに剖検症例を担当させ、彼らが主体的にその病態解析を行うMini Case Study、Case Studyと称する実習が導入されている。それぞれ医学科第2学年、第4学年時に行われるが、特に後者では、最後に、学会発表さながらのポスター発表をグループごとに行い、学生・教官の全員でそれぞれの内容を評価し、教育が活性化されている。 
 2014年から、臨床検査医学講座教授が防衛医大検査部長を兼ねることになったため、それまで検査部が行っていた臨床検査医学の講義・実習も新たに本講座担当となった。臨床検査学の講義・実習は、現在、医学科第2学年、第4学年のカリキュラムに組み込まれ、特に後者には基本的臨床手技を学び、臨床実習に上がる前の共用試験(OSCE; Objective Structured Clinical Examination)にも関係し、重要な技術教育となっている。ここには、病院検査部、輸血・血液浄化療法部のスタッフの協力がある。加えて、臨床検査学および外科病理学の本来の意義、大切さは、座学や単なる実習では認識され難く、実際の臨床現場で、それらが再認識される場合が多いと考えられる。その意味から、病院検査部のBSLにおいて、効果的な補講を行うことに努めており、外科病理学分野については、特に、検査部島﨑講師の協力が大きい。臨床検査学についても、検査現場の見学で終わらず、検査値をどう解釈するかを学ばせるRCPC、臨床検体を用いた実地の微生物検査手技等を盛り込んだ学生が自ら考え、行動できる研修形式としている。
 なお、今後は、本講座名が、臨床医学講座としての臨床検査医学講座に変更になったことも鑑み、本講座が担任する2学年から4学年にわたる病理学の講義も、基礎医学部門としての病理学だけでなく、臨床検査学も含めた、より臨床医学に近い内容の講義に変更・充実させていく予定である。

研究の要約

初代鈴木教授以来、研究科や利用医官等の研究項目に自由をもたせる方針は健在で、河合教授、中西教授の時代、肺癌のテロメア長・テロメレース活性の解析、悪性中脾腫の発生・多様性、尿路上皮癌の予後因子の解析、Elastinと粥腫安定性、低圧低酸素環境で誘発される肺高血圧モデルラットにおけるP2X4受容体等が進められていた。現スタッフとしては、緒方准教授の腸管スピロヘータに関する研究、宮居助教における泌尿器科領域の腫瘍関連研究等が進められている。今回着任した松熊教授は、外科病理学的観点からさまざまな臓器の臨床病理学的研究を行ってきており、肺がんの形態的特徴に関する研究、肝臓の再生・CD34陽性血管発現の意義、大動脈弁研究、軟部腫瘍の発生、GISTの側方進展に関する研究等が含まれる。現在、防衛医大における新たな外科病理学的研究を模索中である。
 以下、ここ2年間の英語掲載論文(講座所属者筆頭)を記す。

1. Miyai K, Ito K, Nakanishi K, et al. Cell-to-cell variation of chromosomal number
in the adult testicular germ cell tumors: a comparison of chromosomal instability
among histological components and its putative role in tumor progression.
Virchows Arch 2019. Mar 14. [Epub ahead of print]
2. Miyai K, Ito K, Nakanishi K, et al. Seminoma component of mixed testicular germ
cell tumor shows a higher incidence of loss of heterozygosity than pure-type
seminoma. Hum Pathol 2019; 84: 71-80.
3. Ogata S, Kameda K, Kono T, et al. Expression of ATF6, XBP1, and GRP78 in
normal tissue, atypical adenomatous hyperplasia, and adenocarcinoma of the
lung. Hum Pathol 2019; 83: 22-3.
4. Matsukuma S, Oshika Y, Utsumi Y, et al. Pleural dedifferentiated liposarcoma: an
autopsy case. Mol Clin Oncol 2019; 10:132-6.
5. Miyai K, Takeo H, Nakayama T, et al. Invasive form of ciliated muconodular
papillary tumor of the lung: A case report and review of the literature. Pathol Int
2018; 68: 530-5.
6. Ogata S, Tsuwano S, Tamai s, et al. Acinar tight junctions are altered in an early
phase of acute edematous pancreatitis in a rat pancreatic duct ligation model.
Ann Biomed Res 1. Doi:10.0000/ABR. 1000128, 2018
7. Ogata S, Shimizu K, Nakanishi K. Immunohistochemical application as step one
for diagnosing human intestinal spirochetosis. Dig Sys 2, doi:10.15761/DSJ.
1000119, 2018.
8. Matsukuma S, Murayama M, Yoshitaka Utsumi Y, et al. Laterally spreading
features of gastrointestinal stromal tumors: A clinicopathological study. Oncol
Rep 39:2681-2687, 2018.
9. Matsukuma S, Obara K, Utsumi Y, et al. Focal positivity of immunohistochemical
markers for pulmonary squamous cell carcinoma in primary pulmonary
choriocarcinoma: a histopathological study. Oncol Lett 2018; 16:7256-63.
10. Ogata S, Horio T, Tominaga S, et al. Hepatic angiosarcoma with an associated
foal nodular hyperplasia like nodule. Dig Sys 2, doi:10.15761/DSJ. 1000115, 2018.
11. Ogata S, Kimura A, Kameda K, et al. Pancreatic metastasis of uterine cervix
cancer mimicking a primary cancer. Dig Sys 2, doi:10.15761/DSJ.1000113, 2018.
12. Ogata S, Hatano B. Pancreatitis-associated unique duodenal fistula: an autopsy
case. Dig Sys 2, doi:10.15761/DSJ.1000114, 2018.

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