医学科Medicine

内科学(感染症・呼吸器)

沿革

内科学講座(感染症・呼吸器)は、平成21年に発足したばかりの新しい講座です。
本校創立以来、内科学第二講座は消化器病学部門と腎臓病学部門により構成されていましたが、平成20年4月に同講座内に新たに感染症学部門(川名明彦教授)が設置され、翌21年4月に、感染症学部門と内科学第三講座の呼吸器病学部門が合併し、内科学講座(感染症・呼吸器)となりました。
平成30年5月現在、当講座の教官は、川名教授、小林准教授、藤倉講師(医療安全・感染対策部を兼務)、林助教、君塚助教、宮田助教のメンバーで構成されています。また、研究科学生として三沢和央が在籍しています。
当講座は、消化器病学部門(穂刈量太教授)とは内科学第二講座の枠内で現在も診療・教育面で密接に連携しています。

教育の概要

(2)-1 卒前教育

医学科第1学年
5月、ハンセン病を対象に、医療福祉、患者の人権、医の倫理を学びます。国立ハンセン病資料館の見学や、元患者である語り部のお話聴講、図書館などでの調べ学習を通じ、班ごとに決めたテーマを追求し、発表会を行います。

医学科第2学年
4月から2月まで約1年間を通じて行われる感染症系科目において、細菌・ウイルス・真菌感染症、感染症治療の基礎、院内感染対策などについて臨床的な観点から講義を行います。
年度末の2月からは呼吸器系の講義が始まります。呼吸器の構造と機能、診断学・症候学、検査値の読み方、正常画像(胸部X線写真、CT画像)など、呼吸器臨床の基本を学びます。

医学科第3学年
4月から1月まで約1年間をかけて本格的な呼吸器病学を学びます。呼吸器外科学、生理学、救急部、小児科学の各講座にもご協力いただき、呼吸の病態生理、呼吸器疾患各論(喘息、COPD、間質性肺炎、呼吸器感染症、腫瘍性疾患など)、治療、予防など、より臨床的で高度な内容が含まれます。
5月から9月の臨床感染症の講義では、感染制御の実践、新興・再興感染症、最新の化学療法などについて学びます。

医学科第4学年
10月から11月、救急・総合医学系科目において、感染症・呼吸器内科診療の基礎となる症候学(呼吸困難、発熱、喀痰、血痰、喀血、胸水)、肺癌に付随する諸症状などについて学びます。
10月には、基本的診療技能実習としてOSCE(Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)に対応できる診療技術を学びます。少グループに分かれ、繰り返し実習を行います。
1月から2月には、研究室配属の学生を数名受け入れ、将来の研究者としての基礎的能力を身につけるため、短期間研究を行います。

医学科第5学年
臨床実習が主となります。学生には実際に感染症や呼吸器疾患の患者を受け持たせ、模擬カルテを毎日記載することで、疾患に関する知識を深めるとともに、診療に伴う責任感とやりがいを経験します。また、カンファレンスに参加し、診断や治療プランの策定にも参加します。そのほかスタッフによる多くのクルズス(レクチャー)があります。
臨床実習以外にも、呼吸器系、感染症系の臨床講義を行います。

医学科第6学年
医師国家試験に向けた補習講義や、医師国家試験作業部会への参加を通じ、国家試験対策も積極的に行っています。
医師国家試験終了後に、「卒業生のプロフェッショナリズム:医師の誓いとバイオセキュリティ」と題し、バイオテロ対策、感染対策と患者の人権、医の倫理などについて、医学科での最後の講義を行います。

(2)-2 卒後教育

初任実務研修(卒後1~2年目)
感染症科と呼吸器内科が共存している当科のユニークな特徴を最大限に生かし、指導医のもとで呼吸器疾患と感染症の入院患者を受け持ち、基礎から応用、手技まで幅広く学びます。毎日の症例カンファレンス、外科・病理との合同カンファレンスを通じ、診断や治療方針策定を学び、また胸部画像診断、気管支鏡検査など当科特有の技術の基本を習得します。

専門研修(卒後5~7年目)
指導医のもと、呼吸器内科、感染症内科のより専門的な知識と技能を学びます。外来診療、他科からのコンサルテーションへの対応、当直業務や気管支鏡検査、人工呼吸器の操作、院内感染制御活動、初任実務研修医の指導と多種多様な業務を行うことで、あらゆる医療現場で主体的に活躍ができる医官となることを目指します。また、専門研修医の指向性に応じ、部外病院研修として、防衛医科大学校病院以外の高度・専門医療施設での研修の機会も準備しています。内科学会認定内科医、総合内科専門医の取得と、感染症学会、呼吸器学会、アレルギー学会など個別の分野の専門医資格取得を支援するために、学会での症例報告や、論文作成も指導しています。

研究科
診療する中で生まれた臨床的疑問を解決する意思を尊重し、感染症学、呼吸器病学において基礎研究、臨床研究の指導を行っています。国内外の他施設との共同研究も進めており、高い見識を備えた医学研究者となることを目標としています。研究の内容は、以下の研究の要約を参照ください。

研究の要約

本講座では、感染症学と呼吸器内科学が融合した、『社会に貢献できる研究』を進めています。

(3)-1 新興呼吸器感染症の診療の標準化を目指した研究

川名は、新興・再興感染症、特に新興呼吸器感染症をターゲットに診療の標準化を目指した研究を進めています。例として、「成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン(厚生労働省研究班)」、「一類感染症診療マニュアル(防衛省研究 班)」、「東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた感染症対策 ガイドライン(日本感染症学会)」などの策定に関与しています。また、内閣官房新型 インフルエンザ等対策有識者会議委員、国立感染症研究所インフルエンザワクチン株検討会議委員などとしてインフルエンザ対策全般に関わり、研究テーマとしています。藤倉はインフルエンザ肺炎の病態とその重症度評価についてこの分野における成果を挙げています。

(3)-2 呼吸器感染症における病原体遺伝子解析の研究

藤倉は、肺炎をはじめとした呼吸器感染症の疫学を中心に研究を行っています。国内で報告された肺炎研究をもとに、呼吸器感染症を起こす病原体の頻度についての統計解析を行ってきました。これをもとに、時代ごとに肺炎をおこす病原体がどう移り変わっていったかについても研究を行っています。さらに近年、微生物の遺伝子解析がより高精度かつ簡便になったことから、呼吸器感染症などの炎症性疾患と微生物の関係について、より大きな視点で解析することを研究テーマとしています。

(3)-3 薬剤耐性菌による院内感染サーベイランスとその感染対策

藤倉は、薬剤耐性菌を対象としてその定着のリスク因子の同定や、院内伝搬の機序を解明するための研究を進めています。その成果をもとに、感染対策室長として病院の感染制御に反映しています。
現在、世界中で抗菌薬が効きにくい微生物(薬剤耐性菌)が問題となっています。薬剤耐性菌に感染し、病気を発症してしまうと、その治療が非常に難しくなることもあります。一般的には、薬剤耐性菌は健常な人には問題を起こさないことが多く、何らかの理由により抵抗力(免疫)が低下した人に感染することがほとんどです。病院は、免疫の低下した人が入院しているという点、また治療で抗菌薬が用いられることにより、使われた抗菌薬に抵抗力を持つ薬剤耐性菌が増えやすく、病院の環境に定着しやすい点から、薬剤耐性菌が問題となりやすい特徴があります。
薬剤耐性菌は人から人へ伝播していきます。この伝播を最小限にするように病院職員は日々感染対策に努めていますが、それでも完全にはなくなっていません。ただ、薬剤耐性菌の伝播が起こってしまった時、なぜ起こったのか、どのように広がったのかを分析し、これ以上伝播が拡大しないように対策を講じるのは非常に大切です。これらの分析を効率的に行い、より効果的な感染防止対策を講じるための研究を行っています。

(3)-4 気道感染ウイルス受容体分布の研究

インフルエンザウイルスに代表される気道に感染するウイルスは数多く存在し、肺炎を発症することで、致死的な状態を引き起こすことがあります。ウイルスが気道に侵入するためには、宿主の細胞に発現している「侵入するための受容体」が必要です。宿主の細胞の表面には糖タンパク質があり、その分子の末端がシアル酸になっている箇所があります。この部分をウイルスは認識して、細胞内に侵入することができます。林は、このような受容体が、気道において上気道から下気道においてどのような分布をしているかを調べることを主な研究テーマとしています。気道感染ウイルスの受容体に対する抗体を用いた免疫組織化学染色を使用した方法を主に用いています。

(3)-5 光を用いたワクチン効果増強の研究

君塚は、現在, 米国ボストンにあるハーバード医科大学マサチューセッツ総合病院、慶應義塾大学医学部呼吸器内科教室、防衛大学校医用工学講座との学際的な国際共同研究で「光をワクチン効果の増強に使う」研究を展開しています。

現在、予防接種に使用されているワクチンの多くは、安全性の観点から病原体そのものではなく、病原体の身体の一部を抽出して製剤化されていることが多いため、ワクチンの効果が落ちてしまうことがあります。そこで、アジュバント(免疫賦活剤)と呼ばれる生物・化学物質を添加し、ワクチンの接種時の反応を高める工夫がされますが、既存のアジュバントには投与部位の疼痛・炎症などの局所反応に加え、疲労・筋肉痛といった全身反応がみられることがあり、副作用の問題が完全には解決できていません。
そこで君塚らは、より効果的で安全なアジュバントを目標として追求し、「ワクチン接種部位へ前もって低用量の赤外光線を照射することで、アジュバント効果が得られる」ことを明らかにしました。
君塚ら国際共同研究チームは、更にこの技術を最適化し臨床応用することを目標として、その分子機序の解明や小型レーザー機器の開発にも従事しています。
光は、既存の生物・化学物質のように身体に残存することもありません。レーザー脱毛や入れ墨除去などの他分野の医療行為に既に認可・使用され、臨床的な安全性は広く認知されており、この分野の臨床応用が期待されています。

(3)-6 重症喘息の病態解明と微生物への免疫応答の関与に関する研究

重症喘息は、気管支喘息の5-10%程度の割合を占めており、吸入ステロイドやその他の併用薬を用いてもコントロールが不十分な状態となっています。頻繁に発作を起こすため、生活の質(QOL)が低下し、満足な日常生活を送ることができません。宮田は「重症喘息の病態を解明することで、より適切で効果の高い治療法を開発すること」を目標としています。
気管支喘息患者の気道には慢性的な炎症が起きています。血液中の細胞の一つである好酸球はアレルギー性疾患における炎症細胞として、気道の炎症を強くする役割を担っています。血液中や喀痰中の好酸球の数は、病気の状態を示すマーカーとしても利用されるおり、好酸球の制御は治療の成功のためには必要不可欠です。宮田らは、重症喘息もしくは好酸球が関わる炎症性疾患の好酸球の性質を明らかにすることで、新しい治療の標的分子を同定するために、慶應義塾大学医学部呼吸器内科学教室と理化学研究所生命医科学研究センターによる共同研究に従事しています。
気管支喘息では、ウイルスが原因となる感冒で発作が引き起こされたり、アスペルギルスと呼ばれる真菌によってアレルギー性気管支肺アスペルギルス症という難治性の病態が引き起こされたりします。アトピー性皮膚炎や好酸球性副鼻腔炎などの肺以外の臓器で起きるアレルギー性疾患では、局所の黄色ブドウ球菌が悪化要因となっていると言われています。このようにアレルギー性疾患の病態には、微生物に対する免疫応答が重要な役割を担っていることが明らかとなっています。この事実に着目して、「微生物への免疫応答を調節することで気管支喘息の治療を効果的にすること」を目指した研究にも取り組んでいます。

(3)-7 サルコイドーシスに代表されるびまん性肺疾患の病態に関する研究

小林はサルコイドーシスに代表されるびまん性肺疾患をテーマとした研究を行っています。

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防衛医科大学校病院 防衛医学研究センター English