医学科Medicine

精神科学

沿革

精神科学講座は辰沼利彦初代教授のもとで昭和51年5月に開設された。平成4年には第二代教授として一ノ渡尚道先生が就任され、平成9年からは野村總一郎先生が第三代教授に就任。野村教授は平成24年4月に防衛医科大学校病院長に昇任し、これを受け、平成25年4月から吉野相英教授が第四代として就任した。防衛医大卒業生のうち当講座で精神科医としての専門的な教育研修を受けた者は、第1期生から第33期生(平成25年)まで114名に及んでいる。

教育の概要

卒前教育はOSCEやCBTの導入に加えて、BSLからクリニカル・クラークシップへの変更など、この10年間で大きく様変わりした。当講座では学生が現代精神医学の標準的な診断法、治療法について正しく理解し、医行為を通じて総合的な診療能力を修得できるように工夫している。講義は助教以上のスタッフ7名が担当し、精神医学総論、各論に加えて、医学心理学、精神保健、リエゾン精神医学、司法精神医学等幅広い分野を扱う。その他、児童精神医学領域は学外から講師を招聘し、トピックスを中心に解説して頂いている。自衛隊精神医療に関しては当講座出身の自衛隊医官(兼務講師)に依頼し、現状と展望についての解説をお願いしている。クリニカル・クラークシップは卒前卒後一貫臨床教育プログラムの前半部分に相当し、当講座で最も力を入れているカリキュラムのひとつである。学生医は4週間にわたり朝から夕方まで初任実務研修医と行動を共にし、主治医チームの一員として病棟回診、初診、リエゾン、修正型電気けいれん療法に立ち会い、小講義形式の臨床セミナーに参加している。特に、受け持ち入院症例に関してはスタッフ、専門研修医の指導下で学生医面接、問題解決型学習を行い、一人一人の学生医に実践的な臨床技術を懇切丁寧に伝授している。臨床セミナーには平成24年度から医師国家試験対策セミナーを新設し、当講座出身の佐野心理学学科目准教授が指導にあたることになった。また、国立精神・神経医療研究センター病院のご好意によって、東京大学医学部との合同実習プログラムに参加させている。この2日間にわたる病院実習では施設見学、デイケア見学、小講義を通じて精神科急性期医療と精神科リハビリテーションの現場を体験することができる。現行カリキュラムに対する学生医の逆評価は概ね高いが、現状に慢心することなく、今後も可能なかぎり学生からの要望に耳を傾け、より良い卒前教育プログラムを作り上げたいと考えている。
初実研修医の臨床研修は卒前卒後一貫臨床教育プログラムの後半部分でもある。そして、初実研修医と学生が常に行動を共にするバディー制を導入したことによって、研修医は担当学生に助言・指導するという明確な役割も担うこととなり、さらなる責任感の醸成につながっている。臨床研修においては、医官にとって精神医学の知識と技能は非常に重要であることを鑑みて、現代精神医学の標準的な到達点を示し、オーソドックスでバランスの取れた教育を心がけている。また、臨床セミナーはもちろん、ビデオを用いた精神症状評価の指導も実施している。卒後5年目からの専門研修医教育については、精神科医としての独り立ちを目指すことが主体となるが、精神保健指定医の資格を取得させることにも力を注いでいる。措置入院例などの当院では経験できない症例については埼玉県立精神保健センター病院の全面的な協力のもとに、資格要件に必要な臨床経験を積ませていただいている。

研究の要約

当講座の研究体制は5つの研究活動から成り立っている。第一は吉野教授を中心に行われている精神生理学研究班である。主な研究テーマは事象関連電位を用いた高次認知機能の探索、皮膚伝導反応を用いた情動反応の探索、心理物理学的手法を用いた疾患研究であり、国際誌にコンスタントに研究成果を発表し、多くの助教、研究科学生が学位を取得してきた。最近では、社会的認知に関する精神生理研究を開始している。第二は丹生谷正史講師と戸田裕之助教を中心に行われている生物学的アプローチによる精神医学研究である。ここでは行動科学研究部門(清水邦夫教授)、生理学講座、陸上自衛隊医学実験隊と共同で施行している。研究テーマとしてはストレス負荷動物の神経細胞内機能蛋白動態(アポトーシス、オートファジー、神経栄養因子関連)、神経細胞活動時の燐酸化蛋白発現状況、自衛隊災害派遣等での生物学的ストレスマーカーの検討等を取り上げている。過去10年間で4名が学位を取得し、現在研究科学生1名が学位取得予定である。第三は重村淳講師を中心として行われている社会精神医学研究であり、東日本大震災後の東京電力福島原子力発電所職員のメンタルヘルス調査は国際的にも高い評価を得ている。第四は佐野信也心理学学科目准教授を中心とする精神療法研究である。パーソナリティ障害、不安障害の精神療法研究が、教育訓練を兼ねて行われている。第五が臨床疫学研究であり、現在は局在関連てんかんでみられる不快気分症の精神科診断学体系における位置づけや抑うつ症状の構造解析を開始したところである。精神医学の研究範囲は広く、使用する方法論も多岐にわたるが、少人数でも効率よく成果を上げているといえよう。

PAGE TOP
防衛医科大学校病院 防衛医学研究センター English