医学科Medicine

免疫微生物学

沿革

昭和50年4月に開設された細菌学講座が本講座の出発点である。初代教授として神中寛教授が九州大学から着任された。神中教授は昭和61年12月に退官し、昭和62年都立臨床研究所より六反田亮教授が着任された。平成5年4月には講座名を時代の趨勢に合わせて微生物学と変更した。平成14年4月に関修司(本校2期)が防衛医学研究センター助教授から第三代教授として着任された。以後、平成19年に助教授であった四ノ宮成祥が本校、分子生体制御学教授として、深澤昌史指定講師が長崎国際大学薬学部准教授に栄転された。長年事務を担当していた篠宮紀子は教務課へ平成21年に転出された。平成23年に羽生仁子助教は結婚退職された。また、平成18年度に講座名を免疫・微生物講座と変更している。現在は関修司教授以下、木下学准教授(9期)、中島弘幸指定講師(15期)、中島正裕助教(21期)、五十嵐正巳(研究科)、西山潔(研究科)、安藤いずみ(事務)、小谷彩(研究補助)の教室員で免疫・微生物学講座の運営、教育と研究を行っている。

教育の概要

第2学年に対して免疫学の講義を教科書(病態のしくみがわかる免疫学、医学書院)とプリントを用いて行っている。プリントは過去の講座員が著者として加わっている英語論文の要旨を和訳させ、結果の図、グラフを理解させることを中心にした、学生参加型の抄読会形式で行っている。要旨和訳は、班ごとに提出させ講座員がチェック・評価している。授業のはじめのころはT細胞の胸腺での分化、B細胞の分化、抗体、補体、NK細胞、NKT細胞やFlow cytometryなどの基本事項を教科書で教え大まかな理解をさせた後、抄読会形式に移行し、肝臓の免疫能と細菌感染やエンドトキシンショック、抗腫瘍免疫、NKT細胞、Kupffer細胞、肝臓の免疫と代謝などについて教育している。常に教室で新しく出された最新の論文の内容を授業の後半で紹介するようにしている。今年度では貪食・殺菌・活性酸素産生を主とするのKupffer細胞とサイトカイン産生を主とするKupffer細胞の2種類の同定や、肝臓の貪食・殺菌型のB細胞の同定である(詳しくは研究の項参照)。覚える授業ではなく、理解する授業にしたいと日ごろから意識しながら行っている。また、科学研究の面白さを伝えるよう心がけている。実習は、1.マウスの胸腺T細胞のFlow cytometryでのT細胞の分化の理解、2.肝臓のNKT細胞やNK細胞のFlow cytometryでの同定、3.ヒト末梢血リンパ球でのNK細胞やNKT細胞(CD56TやCD57T)の同定、4.マウスに羊赤血球を腹腔投与し、一週間後の末梢血の抗体産生(IgM,IgG)の測定、5.腫瘍細胞とマウスやヒトのリンパ球を用いた細胞傷害(キラー)活性の測定である。授業の内容を学生が再確認できる内容になるよう配慮し、レポートを通して研究を感じられるよう指導している。さらに、分子生体制御学の四ノ宮教授と共に細菌学の実習を行っている。内容は細菌のグラム染色、莢膜染色、芽胞染色、細菌の抗生物質感受性、腸内細菌、好酸性菌の同定、などである。

研究の要約

関教授が着任した当初は、大腸菌感染、リステリア感染、肺炎球菌感染と生体防御、IL-18の治療の機序など、細菌感染と免疫が、NKT細胞による抗腫瘍免疫や実験性肝炎などと共に研究の中心であったが、最近ではKupffer細胞や、B細胞の分化などの研究やnon-alcholic steatohepatitis (NASH)と肝臓の免疫細胞、肝臓の代謝と免疫などさらに踏み込んで肝臓の本質に迫る研究を行っている。過去の10年の主な研究成果を挙げてみたい。

  1. recombinant IL-18は、マウスを大腸菌、リステリア菌、肺炎球菌、MRSAの致死的感染を様々な免疫系を賦活化して阻止する(2004、2006、2012年)。
  2. 抗TNF抗体はα-GalCerによるNK細胞の発揮する抗腫瘍効果を低下させずに、NKT細胞の肝細胞傷害を阻止する(2004年)。
  3. マウス肝臓のB細胞は脾臓のB細胞と異なり、LPSに対してIgM産生をせず、IL-12やIFN-γを産生する(2006年)。また、肝臓のB細胞は大腸菌を貪食・殺菌し、IL-12を産生する。すなわち、B細胞はリンパ球系ではなくミエロイド系である(2012年)(図1)。
  4. 肝臓のNKT細胞は、TNF/FasL/Fas経路で肝細胞傷害を引き起こすが、部分肝切除後の再生肝細胞の再生を同じ経路で促している(2006年)。
  5. IL-18は肝臓のNKT細胞のIL-4とIFN-γの産生を計時的に調節する(2007年)。
  6. 細菌に共通するDNA motif (CpG-ODN)は、肝臓のNK細胞を活性化して肝臓の抗腫瘍活性を挙げるが、NKT細胞はTNF/FasL/Fas経路で肝傷害や多臓器不全を引き起こす。この際、抗TNF抗体は、抗腫瘍免疫を低下させずに肝傷害や多臓器不全を阻止する。すなわち、全ての細菌が肝臓の免疫の活性化しうる(2008年)。
  7. CRPは肝臓のKupffer細胞の賦活因子であり、Kupffer細胞の貪食能を増強しTNFの産生は低下させることで実験的肝炎や多臓器不全を改善する(2009年)。
  8. 肝臓のKupffer細胞には貪食・殺菌・活性酸素産生を主とするKupffer細胞とサイトカイン産生を主とするKupffer細胞の2種類があることを同定した。2種類のKupffer細胞機能を分担している(2010年)。前者は放射線抵抗性で肝臓で分化し、後者は放射線感受性で骨髄から肝臓へ遊走し、IL-12やTNFなどのサイトカインを産生する。前者は細菌感染防御に、後者は肝臓の抗腫瘍免疫や炎症に関与する(2013年)。すなわち両Kupffer細胞は機能も発生分化も全く異なる細胞群である(図2)。
  9. マウスを高脂肪高コレステロール食(HFCD)で飼育すると肝臓のNK細胞による抗腫瘍活性は増加するが、エンドトキシンショックに弱くなる。これは、サイトカイン産生型のKupffer細胞の増加活性化によりTNF産生が亢進するからである(2011年)。同様な機序で、HFCDで飼育したマウスはCpG-ODNやα-GalCerを投与した後の肝傷害が悪化する。

今後の研究課題は、肝臓の免疫と代謝の融合である。言うまでもなく、肝臓はたんぱく質、糖、脂質、コレステロールの代謝生成臓器であり、貪食能を有するKupffer細胞は細菌を貪食・殺菌するだけでなく、栄養素を貪食し消化し、エネルギーを得ている。特に、NASH、糖尿病、肥満、動脈硬化と言った生活習慣病を主なターゲットと、肝細胞とKupffer細胞の相互作用を睨みながら、その発症のメカニズムと予防、治療を追及してゆく。

肝貪食型B細胞の同定

図1.肝貪食型B細胞の同定

図2.2種類のクッパー(Kupffer)細胞

図2.2種類のクッパー(Kupffer)細胞

PAGE TOP
防衛医科大学校病院 防衛医学研究センター English